やっぱり原作も賛否両論。映画「オリエント急行殺人事件(2017年版)」の感想(ネタバレ)

イギリス人推理作家アガサ・クリスティーの不朽の名作、「オリエント急行殺人事件」。1934年に発表されて以来、世界中から愛されている長編推理小説で、これまでにも何度か映画化・ドラマ化がされている。

アガサクリスティーの著作における人気キャラクター、名探偵ポアロが登場する作品で、ポアロシリーズとしては8作目。シリーズの中でも特に有名な作品の一つである。

と、語っておきながら、実はお恥ずかしながら、僕はこの作品を読んだことも、観たこともなかった。

今回、そんな「オリエント急行殺人事件」が再び映画化されたとのことで、映画館へ行ってみることにした。ということで、今回はその感想についてご報告。

作品の性質上、どうしてもオチまでネタバレしないと感想にならないので、全部話しちゃいます。

まだ観ていない人はご注意ください。

photo : 映画『オリエント急行殺人事件』オフィシャルサイト

まず映画の良し悪しより、この物語が肌に合うか

たぶんこの映画を評価する上では、そもそもこの「オリエント急行殺人事件」というストーリー自体が肌に合うかどうかに左右されると思う。

もっと言うと、この原作の結末が許せなければ、ほぼ評価は決まったようなものだと思う。

そして僕はというと、このストーリーが肌に合わない側の人間のようだ。

だから映画を楽しんだ方や原作ファンには申し訳ないが、どうしてもネガティブな感想を持ってしまう。

あとで調べてみると、やっぱり、もともと賛否両論が多い作品のようだね。

言い方は悪いが、映画を見て最初に思った感想は、「そりゃ、古典だからといってすべて良いものだとは限らないよね」と言うものだった。

ツッコミどころ満載のオチとラスト

オチを言ってしまうと、急行列車に乗った乗客全員が犯人という、推理小説の解としてはあまりに突っ込みどころ満載な結末。

なんか「登場人物全員が犯人って言う話を書いたら面白いんじゃね」っていう安易な発想からスタートして出来た物語のようにも思えてしまう。ファンの人には申し訳ないけど、あらゆる設定、展開において、ご都合主義的な感が否めない。

推理小説はあくまで一定のリアリティの元で成立するものだと思う。

つまり、リアリティ(現実)という制約の中で、いかに斬新で鮮やかな手品とその種明かしを行うことができるか。そしてその中に、人間模様やエピソードの面白さを詰め込むことで味が出てくるのだ。

トリックにリアリティがあればあるほど、「なるほど、やられた!」となり、推理小説ならではの爽快な読後感をもたらす。一方、一件落着の爽快感とともに、事件を通じて失ったもの、取り返せないものを同時に描くことで、より物語に深みを出すこともできる。

そう言う意味では、この作品にはリアリティが薄いのかなと思う。百歩譲って、「乗客全員が犯人」という結末は許か否かのギリギリのラインだろう。

「ギリギリセーフでしょ」という人はこの作品を受け入れられるだろうし、「いや、アウトでしょ。ありえないでしょ」という人は、僕のようにこの作品を評価することができない。

今更言うまでもないけれど、

  • 全員犯人ならポアロが絶対狙われるんじゃね?
  • みんなでポアロを○した後に、盗賊が襲って来たとか言えばよくね?
  • 何やっても、みんなが同じ証言すれば成立しね?
  • というか、別に関係者全員いる列車内で殺さなくても良くね?逆に怪しくね?
  • そもそも、みんなで刺すとかありえなくね?被害者面して、すごい悪い奴らじゃね?

というのは誰もが簡単にたどり着く疑問じゃないだろうか。

最後、犯人見逃すってどうなのよ

特に気に入らないのが、最後にポアロが犯人たちを見逃すという結末。

これをやってしまうことで、何の痛みもない物語になっている。

文学性が損なわれて、ただのご都合主義的なハッピーエンドになってしまっている。

善と悪の葛藤は姿を消して、「ただ犯人たちが恨みを晴らしただけ」「謎が解けたポアロさんがすっきりしただけ」の話になっているんじゃないかなと。

この点は、原作が最も賛否両論を呼ぶ部分なのだそうだが、いやー、ないわー。

でも、デイジー・リドリー、いいわー

「オリエント急行殺人事件」という作品を知ることができたこと以外に、唯一、観て良かったと思えるのがデイジー・リドリーが出演していたこと。

新「スターウォーズ」シリーズで主人公を演じる彼女。他の作品で見るのは初めてだったが、よかった。とてもよかった。

本当に、強さ、弱さ、美しさ、可愛さ、女性的な魅力、男性的な部分をバランスよく兼ね備えた数少ない女優だと思う。

スターウォーズのイメージがだいぶ着いてしまっているけど、他の作品でも今後の活躍に期待したいね。

おわりに

終始ディスってしまいました。原作ファンの方はごめんなさい。

デイジー・リドリーに限らず、全体的にキャストは悪くなかったように思います。というか、かなり豪華だよね。

他の脚本でこのキャストを観てみたかったかな。

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