クストリッツァらしさ全開!映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」のあらすじと感想(ネタバレ)

鬼才・エミール・クストリッツァ監督の新作が上映されると知り、公開後すぐに観に行った。

その名も「オン・ザ・ミルキー・ロード」

ミルキーロード?

牛乳の道?

と、タイトルからは一体何の話か、全く想像もつかなかったが、公式 WEBサイトなどをちょっと覗いてみると、「ああそういうことね」と合点。

と同時に、「ふつー、こんな設定考えるかー」と可笑しさ半分、ワクワク感が止まらなかった。

それはこんな設定。公式 WEBサイトの一文から。

「戦火の中、ミルク運びの男と美しい花嫁の壮大な逃避行が始まる。」

主人公はミルク運びなんかい。しかもロバに乗ってる…。

いかにもクストリッツァ監督らしいというか、もうこの時点で、今回はどんなユーモアが炸裂するだろうという期待感とか、戦争が登場人物に何をもたらすのだろうという物憂さが感じられ、そして何となく、いつものどんちゃん騒ぎのシーンまでもが聴こえてくる。

戦争と愛と逃避行。設定から何となくイメージされるのは、同監督の「ライフ・イズ・ミラクル」(2004年)だろうか。

photo : 映画『オン・ザ・ミルキー・ロード』公式サイト

映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」のあらすじ

隣国と戦争中のとある国。右肩にハヤブサを乗せたコスタ(エミール・クストリッツァ)は、村からの戦線の兵士たちにミルクを届けるため、毎日銃弾をかわしながらロバに乗って前線を渡っている。 国境を隔てただけの、すぐ近場同士で続く殺し合い。いったい戦争はいつ終わるのか、誰にも見当がつかない。
そんな死と隣り合わせの状況下でも、村には呑気な暮らしがあった。おんぼろの大時計に手を焼いている母親と一緒に住んでいるミルク売りの娘ミレナ。美しく活発な彼女の魅力に村の男たちはメロメロで、皆がミレナ目当てもあってこの家のミルクを注文する。
そのミルクの配達係に雇われているのがコスタだ。コスタに想いを寄せているミレナは、ひとつの計画を思い描いていた。戦争が終わったら、兵士である兄のジャガが戦場から帰ってくる。兄は、この家に花嫁として迎える女性と結婚する予定だ。その時と同じ日に、自分はコスタと結婚するのだと――。(公式WEBサイト

主演はエミール・クストリッツァ監督自らが演じ、ヒロインとして「007 スペクター」でボンドガールを演じた、「イタリアの宝石」と称される女優モニカ・ベルリッチが出演。

ミルク売りの娘ミレナ役を演じるセルビアの女優スロボダ・ミチャロヴィッチもかなりの美人で目が離せない。

劇場に行ってみた。

劇場は全国のミニシアターが中心。僕は有楽町のTOHOシネマズシャンテに行くことに。

大雨の中、有楽町駅を降りてしばらく歩くと到着。

休日の最終上映で、上映が始まったばかりということもあり結構混んでいた。

TOHOシネマズなのにシャンテでは、ポップコーンにバターがかけてもらえない。残念。好物なのに。

エミール・クストリッツァ監督らしさ全開

開始早々、銃声の応酬。戦火の中をロバに乗って岸壁を走りミルクを運ぶ主人公に、バスタブに溜まった血に飛び込む鳥、主人公の肩に乗るハヤブサや情緒感あふれる音楽など、冒頭からエミール・クストリッツァワールドが全開。

予告編からもわかるように、音楽、戦争、動物、田舎風景、愛など、今回も同監督作品の定番の主題がたくさん詰まっている。

作中に登場する動物たちは今回も大活躍。

ハヤブサ、ロバ、クマ、蛇、白鳥、羊など、今回もたくさんの動物が登場し、人間顔負けの存在感で名演技をしている。

宴のシーンは今回も圧巻

クストリッツァ映画といえば、陽気なジプシー音楽に任せて踊り騒ぐ「どんちゃん騒ぎ」。

今回も圧巻の宴シーンが描かれ、音楽隊の生演奏が盛り上げている。

映画の音楽は監督の息子、ストリボール・クストリッツァが担当。

監督自らも所属するバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」に参加しており、クストリッツァ作品の音楽の多くを手がけている。

中盤まではとにかく面白い、が。。。

ここからは特にネタバレになってしまうが、この話は大きく3つの展開で構成されている。

序盤は戦火の中でミルクを運ぶ主人公と、それを取り巻く人物、周辺の設定を描くシーン。

中盤はミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ)の兄である軍人ジャガ(プレドラグ・“ミキ”・マノイロヴィッチ)とヒロインの花嫁(モニカ・ベルッチ)の登場から、ダブル結婚式に至るまでのシーン。

そして、後半はこの映画のメインでもある主人公と花嫁の逃避行のシーンである。

ただ、後半がなかなか盛り上がらない。

中盤までの展開はとにかく面白いのだが、後半にちょっと中だるみ感がある。逃げ回る逃避行シーンがとにかく長いのだ。

また、高原のような場所を逃げ回るため、映像もやや単調感があり、一つ一つの尺も長い。

最後は間延びしたまま終わってしまい、ちょっと消化不良感が残る。

例えば、「ライフ・イズ・ミラクル」のような盛り上がりと潔良さがある終わり方になっていればよかったなと。

ちょっと勿体無いな。

おわりに

そうは言っても、エミール・クストリッツァ監督の魅力が詰まった、ファンには見逃せない作品であることは間違いない。

ネット上の映画ファンのコメントの中には、今年のベスト映画に挙げる人もいる。まだ観ていない人はぜひ自分の目で確かめてもらいたい。

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